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光の当たるところ

りんちゃんがうちのお店に入店した時、彼女はまだ19歳で、最年少だった。
当時は見るからにギャルで、色が黒く、全身109みたいな服装をして、屈託のない、けらけらとよく笑う明るい子だった。お人形みたいなかわいい顔をして、おっぱいがすごく大きくて、スタイルのいい、お客さんにも人気の女の子。


母子家庭で、うちのお店に来る前は、新宿の、ノルマがきついので有名なおっぱいパブで働いていた。若いのに、長く付き合っていた彼氏がいて、うちのお店に入店して1年ちょっと、りんちゃんが20歳の頃に、赤ちゃんが出来て、その彼氏と結婚するというので退店していった。

それからも、りんちゃんと新宿時代から仲良しだった女の子2人、MちゃんとHちゃんがうちのお店に長くいたので、りんちゃんの話は時々聞いていた。いいお母さんをしているみたいだった。

数年前、りんちゃんが離婚したという話を聞いた。でも、原因などは全然知らずにいたんだけど、少し前から、Hちゃんが今働いている銀座のクラブで一緒に働きだしたと聞いた。

そしてこの前、うちの店のOB(女の子だからOG?)の女の子の結婚式があって、久しぶりに、りんちゃんと再会することになった。ちなみに、私たちのテーブルだけ全員ホステスだったので、そのテーブルはやけにケバく、自分たちでもおかしくて笑った。でも、それを自分たちで皮肉って笑っている空気が、ほんとにいかにもうちのお店の仲良しな感じをかもし出していて、楽しかった。

私の中でずっと19歳だったりんちゃんは、やっぱり今でも19歳みたいな顔をして、でも少しだけお姉さんぽくなって、とってもきれいになっていた。それでも、相変わらず、無邪気によく笑うりんちゃんを見て、懐かしさで胸がいっぱいになった。

結婚式の後、私たちはなんとなく名残惜しく、現役の子たちはいつでもお店で会えるけれど、OBの子たちはなかなかそうもいかないので、飲みに行くことになった。

そこで、りんちゃんは、今まであったことを話してくれた。

うちの店を退店する時にできた子供の後に、もう一人子供ができたこと。

妊娠7ヶ月くらいの時に、その子供は、臓器に1箇所くらい問題がある可能性があると、お医者さんに言われたこと。それでも、産まれてきてほしい、産んで、治療をすればいいと思って、産んだこと。

実際に産んでみたら、体中の臓器ほぼ全てが、正常に機能しないと分かったこと…。

治療費を稼ぐために、旦那には内緒で、風俗で働いたこと。

20回以上手術を繰り返して、最終的にお医者さんに言われたのは、その子供は治らないということ…。

治療する術がそれ以上ないからといって、病院から追い出されてしまったこと。

24時間の看護が必要な状態で、必死でりんちゃんが看護をして、旦那は何一つ手伝ってくれなかったこと。

死に物狂いで仕事を3つかけもちして、子供の看護をして、身体も心もボロボロになってしまって、りんちゃんが入院してしまったこと。

離婚することになった旦那側からは、そんな状態の人間に子供を任せられないと、上の子も下の子も連れて行かれてしまったこと。

りんちゃんは、大きな瞳から涙を流して、そういう身体に産んでしまったのは、あたしだから、あたしのせいなんだ、と言った。

私も、涙があふれて止まらなかった。違うよ、りんちゃんのせいじゃないんだよ、たまたま、そういう風になってしまったんだよ、と必死に言い聞かせた。

そして、自分が壊れるまで頑張って、風俗でまで働いて、それなのに治らないとお医者さんに言われた瞬間、下の子に対する愛情がまったくなくなって、人間というよりは、物にしか見えなくなってしまった、とりんちゃんは言った。

あたし、一緒に暮らしていたら、いつか殺してしまうかもしれない。だから、離れていた方がいいんだ、と悲しい目をして言った。

そうなってしまったりんちゃんを、誰が責めることが出来るだろう。
なのに、りんちゃんは、ずっと自分を責めているみたいだった。りんちゃんは、昔から、優しい子だった。

そこから数年が経って、今は一人で暮らしていて、夜の仕事もまた始めて、好きな人も出来て、ようやく普通の生活が出来るようになった。その日、相変わらずあどけない顔をして、無邪気によく笑うりんちゃんを見て、昔のままだと思ったけど、その話を聞いて、りんちゃんがこうして昔のように戻るために、どれほどの道のりがあったのかと思うと、やっぱり涙が出た。

りんちゃんは、頑張ったよ、少し、自分のやりたいことをやった方がいいよ。りんちゃんは、幸せにならないといけないよ、と言うと、りんちゃんは、こういった。

「うん…でもね、私のやりたいことって、お母さんになることだったんだ」

一番やりたかったことを、そんなふうに取り上げられて、壊されて、なぜ、りんちゃんばかりがこんな辛い思いをしなければいけないのか、その理不尽さが遣り切れなくて、私たちはいつまでもそのバーで、飲んでいた。

やっぱり、お水の子は平凡とは言えない人生を歩んでいる子も多くて、それも、よくない方向でそうなってしまう子も多く、りんちゃん以外の子のことでも、その日はたくさん話すことがあったんだけど(それこそ命に関わるくらい大変なこと)、それでも、その日は私は、りんちゃんのことで頭がいっぱいだった。

りんちゃんが、その日結婚したKちゃんのことを、こういった。

「Kちゃんは、光みたいな人だよね。Kちゃんが、こうやって、私たちOBをまた、引き会わせてくれたんだね」

ほんとに、そうだと思った。

何年も空いていた時間を埋めるように、これからも、ちょっとずつ、りんちゃんと仲良くできたらいいな、と思う。私たちみんなで、りんちゃんをちょっとでも笑顔にしてあげられたらいいな。





テーマ: 日々のつれづれ | ジャンル: 日記

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