スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

いつか会う日まで

姫は、元々新宿のキャバクラから他の2人の女の子と一緒にうちのお店に移籍してきた子でした。

源氏名に「姫」という字がつくので、みんなに姫と呼ばれていた。その新宿のキャバから来た3人娘の一人は、前に日記に書いたことがあるりんちゃんという女の子(りんちゃんのことを書いた日記)、もう一人はMちゃんという、つい最近も会ったけど、今でも付き合いがある子。

その3人娘は当時お店の中でも若くて、いつも3人でキャッキャ騒いで楽しそうで本当にかわいかった。

りんちゃんはほどなくして妊娠して結婚が決まって寿退店となり、Mちゃんと姫が残った。その頃二人は青山かどこかで一緒に暮らしていたのだけど、二人が通っていたバーのバーテンに、二人が二人とも惚れてしまい、結局その男がMちゃんを選んだことで姫とMちゃんは絶縁。Mちゃんはうちの系列店へ移って行った。

姫は、すごく個性的な子だった。

色がとっても白くて、驚くくらい目が大きくて、外人の子供みたいなくるんとしたパーマのショートカットで、よく赤い口紅をつけていて、それが白い肌によく映えた。とてもおしゃれで、おっぱいはすごく小さいんだけど、とても脚のきれいな子だった。

ものすごい酒豪で、強いんだけど飲む量も半端ないので、最終的にはクビみたいな形で退店となってしまったんだけど、うちを辞めてからも夜の仕事をしていて、時々お客さんとうちのお店にも飲みに来てくれた。

姫を酔わせようとしてアフターに連れ出すお客さんは、決まって自分が潰されるのがオチというくらい、お酒の強い子だった。私の一歳下で、源氏名ではなく、いつも私のことを「まみ、まみ」と呼んでお姉ちゃんのように慕ってくれていた。

本当はすごく気が弱くて優しいのに、ちょっとわがままなところもあって、退店してからうちの店に飲みに来た時などは、「まみ、まみはここに座るの!」と私を近くに座らせて、ちょっと気に入らない女の子がいると「アンタきらい」などとケロっと言ってしまう、子供のようなところがあった。

Mちゃんと絶縁した頃からか、元々本当は繊細なところがあった姫は、ますます酒びたりになり、昼過ぎに起きてから一日中お酒を飲むという生活をしていた時もあるようで、何年か前には死んでもおかしくないような病気をして入院をした。

そして、奇跡的に助かったのだけど、お酒はほとんど飲んではいけないという身体になり、慢性的に神経科に通い薬を服用しているようだった。うちを辞めてからはずっととある銀座のクラブで働いていて、普通ならクビになるような働き方でもずっと面倒を見てもらっているようだった。ひどい時は、酔って店の裏口か何かで薄いドレス一枚のまま、雪が降る中眠っていることもあったと聞いた。

姫は深刻な話が大嫌いな子で、本当はどんなに弱っていても、誰にも泣きごとを言わなかった。

私は会うごとに、身体どうなの?元気にしてるの?と田舎の母親みたいにいつも姫に聞いていたけど、私が心配していることをどんなに言っても、「大丈夫だよ~デヘヘ~」と必ず茶化す子だった。

最後に話をしたのは去年の大地震の後。

姫の実家が福島だったので、実家大丈夫?と連絡をしたら、「ぜ~んぜん大丈夫~」という短いやり取りをしただけだった。

その姫が、自分のマンションの8Fから飛び降りて亡くなったと聞いた。

愕然とした。この子はいつか病気で死んでしまうといつも思っていたけど、まさか自分で死を選んでしまうとは思わなかった。いや、少しは思っていたかもしれない。姫はいつも不安定な子だった。早く、大切にしてくれる人を見つけてほしいといつも思っていた。

飛び降りる瞬間、何を思ったのだろう。

何も思っていなかったのか。少しは迷ったのだろうか。それとも、もう何の未練もなかったのだろうか。誰にも、助けを求めることすら、もう諦めてしまっていたのだろうか。姫の性格からして、生きているのがつらいというよりは、生きていて何の意味があるのか、普段の暮らしぶりからして、そんな風に思っていた気がしてならない。

もう、この世に何の興味もなくなってしまったのか。疲れてしまったのだろうか。

ほんの一瞬でも、姫に痛みも苦しみも恐怖もなかったことだけを祈る。命を絶つことは罪とされているけど、姫は生きていた時の毎日を、苦しんで過ごしていたように私には思えて、あれだけ苦しんだのであれば、どうか天国へ送ってあげてほしいと思う。そして天国で好きなお酒を、もう身体の心配をせずに好きなだけ飲んで、心安らかに過ごしてほしい。

姫、あなたはみんなに愛されていたよ。姫には分からなかったかもしれないけど、私も、他のたくさんの人たちも、姫のことが大好きだったよ。昔よく二人を一緒に指名してくれていたFさんは、もう私は何年も会っていなかったけど、昨日姫のことを伝えるためにメールをしたら、今朝電話をくれたよ。Fさんと電話したのなんて、散々指名されてはいたけど初めてだったよ。

いつか、必ずまた会おう。姫が絶縁してしまったMちゃんにも、姫のこと伝えたよ。また姫に会う頃にはきっと仲直りが出来るよ。その時は、姫の大好きなお酒をみんなで飲もう。その時まで、姫はゆっくり上から私たちのことを見物していて。またね、姫。
テーマ: 日々のつれづれ | ジャンル: 日記

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。